海外在住者が日本に一時帰国する際に心配なのが、日本での医療費。
海外転出届を出している場合、「住民票がない=国民健康保険に入っていない」という状態なので、もし一時帰国中に怪我や病気をした場合、医療費が10割負担になってしまいます。
大人の場合はちょっとしたケガや病気なら市販の薬や気合で乗り切れるかもしれませんが、小さいお子さんが一緒の場合は心配ですよね。

その辺はちゃんとしてよね。

今回は一時帰国者が医療保険に入る3つの方法+αについて解説します。
一時帰国者が入れる3つの医療保険
一時帰国者が日本でかかる医療費を保険でカバーする方法は以下の3つです。
- 住民票を戻して日本の国民健康保険に加入する
- 海外(居住国)発行のクレジットカード付帯の海外旅行保険を利用する
- 海外(居住国)発行の民間の海外旅行保険に加入する

それぞれのメリット・デメリットを順に見ていきましょう。
①住民票を戻して日本の国民健康保険に加入する
海外転出届を出していて日本に住民票がない場合は、役所に転入届を提出して住民票を戻せば即日で国民健康保険に加入することができます。
届け出期間は引っ越してきた日(帰国日)から14日以内です。
- 転入する家族全員分のパスポート
- 戸籍謄本(本籍地以外に転入する場合)
- 戸籍の附票(本籍地以外に転入する場合)
- パスポートの日本帰国日の証印(スタンプ)または飛行機の搭乗券の半券
メリット
保険料が3割負担で済む
住民票を戻せば日本在住の日本国民として扱われるので、一時帰国でも医療費が3割負担で済みます。
子供の医療費がほぼ無料になる
ほとんど全ての市区町村では子供の医療費の助成制度があり、保険診療の自己負担分を市区町村が負担してくれます。

つまり、子供は医療費が無料になるってこと!
条件や対象年齢は自治体によって異なりますが、15歳までの子供の医療費が無料もしくは少額負担になる場合が多いです。
児童手当がもらえる
中学生までのお子さんがいる場合、お子さんの人数や所得に応じて児童手当が毎月給付されます。
受け取れる児童手当の金額は以下のとおりです。
支給対象児童 1人あたり月額 0歳~3歳未満 15,000円(一律) 3歳~小学校修了前 10,000円
(第3子以降は15,000円※)中学生 10,000円(一律) ー出典:内閣府のホームページー
※児童手当は毎年6月、10月、2月に4か月分まとめて口座に入金されます。
※収入が所得制限限度額以上の場合には、児童1人につき月額5千円の支給になります。
ただし、月をまたがないうちに住民票を抜いた場合、児童手当は給付されませんので注意が必要です。
通常の歯科治療も保険適応
海外旅行保険では、急な痛みの応急処置や事故による外傷以外の歯科治療はカバーされませんが、国民健康保険なら通常の歯科治療も3割負担で済みます。

自治体によっては子供の歯科治療が実質無料の場合も!
アメリカやオーストラリアをはじめ、海外では歯科治療費がびっくりするほど高額な場合が多いです。

オーストラリアは、虫歯1本(詰め物のみ)で200~400ドルくらいかかるよ。
「居住国での歯科治療費が高額なので、一時帰国の際に虫歯を全て治療したい!」という人は、国民健康保険に入ることができれば大助かりですね。

ちなみに私は元歯科医師ですが、日本の歯科治療レベルはとても高いので、オーストラリアでは歯医者に行きたくありません。。。
持病や既往症に起因する症状の治療費も保険適応
一部の海外旅行保険を除き、ほとんどの場合は持病・既往症に関する医療費は保険対象外です。
一時帰国中に万が一持病が悪化したり、過去最近にかかった病気が再発しても保険金が下りないので、持病や既往症がある方は国民健康保険に入った方が安心です。

お子さんが喘息だったりした場合は国保が無いと不安ですね。。。
デメリット
一時帰国者は転入を断られる場合が多い
一番のデメリット、というかネックになるポイントがココ。
これは完全に市区町村よって対応が異なりますが、そもそも短期の一時帰国だと住民票の転入を受け付けてくれない場合があります。
仮に一時帰国だという事を言わないで転入できたとしても、転出届を出すときにこっぴどく注意され、次回の一時帰国の際には転入しないように誓約書まで書かされる場合もあります。
どれくらいの期間日本に滞在すれば住民票の登録ができるのかも自治体によって回答がバラバラで、例えば川崎市のホームページでは
海外に生活の本拠を有する日本人が日本に一時帰国した場合には、その滞在期間が1年以上にわたる場合を除き、原則として海外の居住地に住所があるとされておりますので、あらかじめ御承知おきください。
ー川崎市のホームページよりー
と記載されています。

はっきり「1年未満だと転入できません」とは言ってないけどね。
そもそも法律や条例で「短期一時帰国の場合の転入は認めない」と定められているわけではないので、回答があいまいな場合が多いです。
なので厳密には短期一時帰国でも転入できるはずですが、現実にはかなりグレーな問題で、市区町村によってははっきり断られます。
ちなみに私の実家のある世田谷区もダメでした。

転出の際に注意され、「もうしません」的な内容の誓約書を窓口で書かされました。
窓口の人は「せめて6か月くらいは滞在していただかないと」的なことを言っていたので、世田谷区的にはそのくらいが目安なようです。
6か月滞在する意思を見せて急遽緊急帰国(のフリ)をするという荒業もありますが、確かに普段税金を払っていないわけだし、何よりまた怒られて嫌な思いをしたくないので私は一時帰国でも住民票を戻してません。。。
保険料が高額になる場合がある
国民健康保険の保険料は前年度の収入をもとに計算されるので、海外に移住して日が浅いうちに住民票を戻すと、保険料が思いのほか高額になる場合があります。
注意したいポイントが、1~3月分の保険料は2年前の年収を元に計算されるという点です。
「去年は日本での収入が無かったから大丈夫でしょ!」と思って1~3月に一時帰国をして住民票を戻したら、高額の国保請求が来たなんていうケースもあるので、注意が必要です。
ただし、転入・転出が月をまたがなければ国民健康保険料の支払いは発生しません。
年金の支払い義務が生じる
住民票の登録をすると同時に国民年金の支払い義務が生じます。
日本国内での前年度収入がない場合は免除されますが、別途免除の申請が必要になります。
住民税の支払い義務が生じる
1月1日の時点で住民登録されている場合は、住民税の支払い義務が生じます。
年末年始に帰国する場合は注意が必要です。
日本国内での前年度収入がない場合には支払いが免除されます。
子供と一緒の場合は就学の義務が生じる
お子さんと一緒に一時帰国して住民票の登録をした場合、お子さんが義務教育の年齢なら学校に通わせる義務が保護者に生じます。
通わせないままでいると管轄の教育委員会から督促状が届き、場合によっては処罰の対象となり10万円以下の罰金が課される場合もあります。

一時帰国でも日本の学校に転入できる場合が多いので、体験学習としてお子さんを日本の学校に通わせるというのも良いですね。
②海外(居住国)発行のクレジットカード付帯の海外旅行保険を利用する
居住国で発行されたクレジットカードに海外旅行保険が付帯している場合は、その保険で一時帰国中に急遽発生した医療費をカバーできます。
日本人が海外でクレジットカードを作るのは少しハードルが高いですが、国際結婚の場合、パートナーのクレジットカードに家族特約がついていればそちらが使えます。(パートナーも一緒に日本に行く必要があります)
ただしカードの種類によって付帯条件が異なるので、事前に利用規約をよく読みましょう。
メリット
事前の手続きがいらない
もしカード付帯の海外旅行保険が使える場合、別途申し込みなどの面倒な手続きは一切ありません。
ただし、自動付帯か利用付帯かはカードの種類によるので、利用条件をよく確認しましょう。
別途保険料の支払いがいらない
ほとんどの場合、自動付帯ならクレジットカードの年会費、利用付帯ならクレジットカードの利用が保険料代わりになるので、カード会社に追加で保険料を支払う必要がありません。

家族特約が付いてる場合、かなりの金額を節約できるね。
浮いたお金でショッピングなどが楽しめちゃいますね!
複数のカードを持っている場合は補償金額が合算できる
海外旅行保険が付帯するクレジットカードを複数所持している場合、それぞれのカードの付帯条件を満たせば補償額を合算できます。
デメリット
補償金額や補償内容に制限がある
別途保険料の支払いがないのが魅力のクレジットカード付帯保険ですが、その分補償額や補償内容に制限があります。
補償内容の制限
補償額の制限
~カード付帯保険と通常の海外旅行保険の比較例~
カード付帯の保険 | 通常の保険 | |
傷害治療費用 | 200万円 | 無制限 |
疾病治療費用 | 200万円 | 無制限 |
賠償責任 | 2000万円 | 1億円 |
疾病死亡補償 | なし | 2000万円 |
手荷物遅延 | なし | 5万円 |
クレジットカード付帯の海外旅行保険を利用する場合は、本当にその補償金額で十分か事前にしっかり確認しましょう。
※ただし、上で述べた通りカードを複数持っている場合は補償額が合算できる場合があります。

ただ、危険な国やアメリカなど医療費が超高額な国に行くとかではなく、あくまで日本への一時帰国が目的ならクレジットカード付帯の補償額でも心配ないとは思います。
③海外(居住国)の海外旅行保険に加入する
日本の会社の海外旅行保険は日本から出発して日本へ帰国する場合でないと加入できません。
しかし先進国ならたいていどこの国もその国の住民を対象とした海外旅行保険会社がありますので、そちらに加入することができます。
メリット
幅広い補償内容から自分に合った保険が選べる
各保険会社は顧客に選んでもらえるように、様々なニーズに対応した特色のあるプランを用意しています。
傷害・疾病治療や救援者費用・賠償責任などの基本的な補償だけでなく、航空機や手荷物の遅延の補償や携帯品損害など、クレジットカード付帯では補償されない部分もバッチリカバーしてくれます。
中にはスキーやスキューバダイビング中の事故などを補償するスポーツ・レジャー用傷害保険、飛行機がキャンセルになった場合などのペット預入延長費用など、ユニークなオプションも沢山あります。

けがや病気だけでなく、万が一起こりうる様々な不測の事態に保険をかけておけば、安心して一時帰国が楽しめますね。
補償額が高額
旅行保険会社が設定する補償額はクレジットカード付帯のものと比べて高額です。
傷害・疾病治療や救援者費用は一番安いプランでも無制限の補償が受けられる会社がたくさんあります。
子供の保険料が無料になる場合も
保険会社によって異なりますが、親が保険に加入した場合、同伴する子供の保険料が無料になる場合もあります。

オーストラリアでは収入のない25歳までの子供の保険料が無料になる保険すらあります!
デメリット
自国民でない場合は加入に一定の条件がある
多くの保険会社が外国人(その国の国籍を持たない人)の保険の加入に対し、一定の条件を設けています。
その国や州の保険制度に加入していることが条件の場合や、特定のビザを所有し一定期間その国に住んでいることが条件など、保険会社によって異なります。
また保険会社によっては自国への一時帰国は保険の対象外となる場合もあります。

各保険会社にメールなどで問い合わせてみましょう。
緊急時以外の歯科治療はカバーされない
海外旅行保険では事故の外傷が原因の歯科治療や急な歯の痛みに対する応急処置以外は補償対象外となります。
日本で虫歯を全て治療したい場合は、全額自費で支払うか国民健康保険に加入するしかありません。
日本語でやり取りができない
海外の保険会社なので、補償の請求などのやり取りはその国の言語で行うことになります。
言語に自信がない場合は、何かあった時に保険会社とコミュニケーションをとるのが大変というデメリットがあります。

国際結婚の場合はパートナーに任せちゃえばいいけどね!
居住国の健康保険で一時帰国の医療費がカバーされる場合も
国によっては海外で発生した医療費をその国の医療保険制度でカバーできるケースもあります。

あまり知られていませんが、実は日本でも海外渡航中の治療費を国民健康保険で一部負担してくれる制度があります!
自分の居住国の医療保険制度がどのようになっているのか確認してみましょう。
一時帰国に使える!おススメの海外旅行保険
グローブパートナー
日本に一時帰国する海外在住日本人におすすめしたいのが、グローブパートナーという海外旅行保険です。
グローブパートナーはパリにある日本人経営の保険代理店ASSETS(アセット)が販売している保険です。
保険商品自体は欧州最大手グループのAllianz社のものなので安心です。
グローブパートナーは日本出発後にも入れる数少ない保険としてバックパッカーの間で有名ですが、実は海外在住の日本人が一時帰国する場合にも加入が可能です。
- 一時帰国者でも加入可能
- 費用が安い(35歳以下の場合、一か月で€59)
- 日本語で対応可能
- 補償額の送金先の国が指定できる
ただ、注意点として
- 一時帰国者の保険は2か月が限度
- 子供も保険料がかかる
- 補償請求時の提出書類はフランスに郵送する必要がある
- フランスからの送金手数料等がかかる
- 海外在住の場合は旅行途中からの加入はできない
などが挙げられます。
※情報は2020年の時点でのものです。ポリシーの変更も有りうるので、事前に会社に確認しましょう。
まとめ
自分一人ならともかく、小さいお子さんと一時帰国する場合なら保険にはなるべく加入したいですよね。
どの保険を使うにしろ、自分が加入対象であるか等も含めあらかじめ疑問点について問い合わせることが大事だと思います。


うちの場合はパパも一緒の時はクレジットカード付帯の保険、自分と子供だけの時は海外旅行保険に入ります。
クレジットカード付帯や民間の海外旅行保険を利用する場合も、提出書類に不備があると保険が下りない場合もあるので、事前にきちんと利用規約をよく読むようにしましょうね。
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